「日向?入るわよ?」
返事をする前にお母さんが部屋に入ってくる。
「はい、電話」
子機を差し出されるが
「いない、って言って」
あたしは受け取らない。
今、誰かと話してもヒドイことを言ってしまいそうで怖いんだ。
湯川みたいに、相手を傷つけてしまうのが怖い。
「いい加減、シャキッとしなさい!
いつまでもぐうたらして、お母さんが何も言わないと思った?!
あんた、甘いのよ。
何あれくらいのことでヘコたれてんの!
社会に出ればもっと辛いことがそのへんにいっぱい転がってるんだから。
わざわざ1個1個に落ち込む気!?
もう15歳なのよ?
ある程度、いろんなことが分かって、半分大人のようなものでしょ。
将来のことを考えろとは言わない。
でもちゃんと、今を見なさい。
いつまで過去を振り返ってるの?
いい?日向。
これからたくさんのことを経験して、
今回みたいに立ち直れないくらい辛いときがあると思う。
それでも生きて行かなきゃダメなの。
それでも、進まなきゃいけないの。
分かったら、はい、これ」
お母さんにほぼ強制的に子機を握らされる。
言い返す言葉はいくらでも思いついた。
でもなぜか言い返せなかった。
あんなお母さん、初めてだ。
そんなことを思いながら気づいたらあたしは言っていた。
「………もしもし」

