「あれが噂の?」
「うん、そう。」
ゴクンと喉が鳴った。
無意識に息を呑んでいた。
なんて綺麗なフォームなんだろう。
なんて綺麗な筋肉なんだろう。
そして、なんてスピードなんだろう。
観客を圧倒させる走り。
とはまさにああいうことを指すのだろう。
あんなの見たことない。
ラスト1周に入る。
でもそのスピードは変わらない。
いや、もしかしたら速くなっているかもしれない。
2位との差がどんどん開いていく。
「……すごい」
思わず口から零れた。
あんなふうに走れたら、今よりもっとこの競技を好きになれるのかな。
あんなふうに走れたら、今よりもっと速くなれるのかな。
そんなことばかりが頭に浮かんだ。

