あたしが、湯川貴斗を知ったのは今から約2年前。

中学生になって初めての大会。


そう。あのときだ。

今でもあたしの記憶に残ってる。


必死で走る、湯川貴斗の姿。




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「日向、頑張ってね!」


「う、うん」


緊張でうまく笑えない。

スタートまであと1分。



ドキドキが増す。


何度か深呼吸を繰り返し、キモチを落ち着ける。


大丈夫。

あたしなら、走れる。


アップの調子も最高だった。


あれだけ、練習したんだもん。

きっと、良い成績残せる。



いや、残してやる。


そう心に誓い、スタートの合図を待つ。




『よーい』



【パンッ】