「ね、なんであんなに強いの?」


湯川が買ってきてくれた焼きそばを並んで食べるあたしたち。



「ボクシング」


「ボクシング?!」


聞き慣れないその言葉を大声で叫ぶ。


「うっさい」

ってもちろん、言われたよ、湯川に。



「ほんと少しなんだけどな。

3年間くらいやってトレーニングで走ってるうちに長距離に目覚めた」


まさかこんなところで、

こんなタイミングで湯川が長距離を始めた理由を知ることになるとは…


「もしあたしが裕実ちゃんだったらもっと感情的になってた?」

さっき不機嫌さは2割増しだったけど、あくまで冷静だった湯川。

興味本位で聞いてみる。



「…………そりゃあな」


その返事を聞いてニヤけるあたし。


絶対湯川、彼女の前ではデレデレしちゃうタイプだ。



「何ニヤけてんだ、バカ」

湯川に頭を軽く叩かれる。



「叩かなくてもいいでしょ?!」

あたしは湯川の肩にグーパンチをぶつける。


そんなことをしてじゃれ合っていた。

そして花火が打ち上がるほんの少し前、その声は聞こえてきた。




「……たか…と?」