「花言葉、ですか?」


私がそう言うと、その人は少し恥ずかしそうにしながら、


「あ、なんかすみません、いや、ちょっと気になって」

「黄色いゼラニウムの花言葉は、偶然の出会い ですよ」

「…え?」


彼は目を丸くして私を見た。


「花言葉とか、覚えてらっしゃるんですか?」

「えぇ、まぁ。ゼラニウムは私の好きな花なので」

「そうなんですか、すごいですね!」


彼は再び満面の笑みをこちらに向けた。


この人の笑顔は周りの人も幸せにしてくれる、と思った。


「そうか、偶然の出会いかー…」


彼は包装された黄色いゼラニウムを見ながら呟いた。


「何かこの花のイメージに合ってると思いませんか?」

「思います、俺ゼラニウム好きになりました」



彼のその一言は私の心をとても温かくさせた。


私の好きな花を、誰かもこうやって好きになってくれるのが嬉しかった。




「大事に育てますね、また来ます」


「…あ、ありがとうございました」




店内から出て行く彼の姿を、私はしばらく見つめていた。


彼の最後のまた来ます、という言葉に嬉しくなり、店内には私の鼻歌が響いていた。









「黄色いゼラニウム」

花言葉  偶然の出会い