「…私思ったんだけど」


徐に愛が口を開いた。

今日もいつもと同じように、愛と二人で花屋の店番をしている。

ぶっちゃけ店長よりも私たちの方がやる気があるんじゃないか、と思う。

愛も、杉本さんに出会ってから毎日のように店番をしている。


愛が初めて彼に出会ってから何週間か経っているが、
彼は3日に1回ぐらいの頻度でこの店に足を運んでくれるようになった。

愛は彼に会うたびに頬を赤くして接客している。
彼もあの綺麗な笑顔で愛との会話を楽しんでいる。

そして、彼は必ず隣に居る私にも声をかけてくれるのだ。


「華原さん、この花の花言葉何か知ってますか?」


誇らしげな顔をしながら私にそう尋ねる彼はまるで子供のようで微笑ましい。


「知らないです」

「よし!華原さんに勝った」

「え?」

「華原さんって花言葉に詳しいから、俺ももっと負けないように詳しくなろうと思って」


彼の笑顔は眩しかった。






「ちょっと、亜実」

「え…あぁ、はい」


ここ何週間かのことを思い出していると、愛に肘で突かれた。


「だから、私思ったんだけど」

「なに?」


愛の表情は珍しく真剣で、少し笑いそうになるのを抑えながら聞いた。


「杉本さん、亜実のこと好きだよ多分」

「えー?」

「だって、亜実と話してる時すっごい楽しそうだもん!」



頬を膨らませながらそう言う愛の言葉に、胸が高鳴った。


彼が、私を。


「でも愛と話してる時だって杉本さん楽しそうだよ?」

「…うーん、なんか違うんだよなぁ」


愛は腕を組んだ。


一体、どう違うんだろう。



愛の言う事がもし本当だったとしたら。

彼が私に少なからず好意を持ってくれているとしたら。


それは素直にすごく嬉しいな、と思う。