「あ、あたし……マジ天才……」
「ももちゃむ、まだそれ言ってんの」
「ももちゃむって言うな……」


前の席に座るロゼが、ハーフだからこその色素の薄い巻き毛を揺らして、からからとあたしを笑った。

ああ、その髪の毛もつぐみちゃんがすきそう。

じゃ、なくて。

疲れた……ダッシュしたからか、また膝が痛いし。
ていうか、見れば薄ら血が滲んでる。

痛い……疲れた……眠い……。

そうだよね、そうだよなあ。
だってあたし、うちでは結構、気を張ってるから。


「あー、今日は転校生を紹介する」
「ももちゃむ、転校生だってー!」


だから、ももちゃむはやめてよ。

ぐったりしながらべったり机にへたばってたあたしは、ちゃんと、先生の話を聞いてなかった。


「じゃあ、御崎(みさき)は──の隣で──」


ああ、御崎って言うんだ。
そっか、早くクラスに馴染むといい


「よろしくね、茅ケ屋さん」
「よろしく……って!?」


ね、とか。

そこまで言えなかった。

──どんがらがっしゃんを目撃された上に助けてくれたあの彼が、『御崎』くんでした。

……嘘でしょ。