「あ、あの、」


何とか顔を上げたところで、がくん、と目線の高さが変わった。

あ、膝笑ってたんだ。

──倒れる!?


「……はれ?」
「ごめん、膝打ってたんだね」


……倒れ、なかった。

見上げてみたなら、あたしの両脇に咄嗟に手を差し込んだ見知らぬ男の子が、申し訳なさげにあたしを見ていた。


「痛い……よね、膝も肘も擦り剥いてるし」


どうしよっか、何て困って笑う彼は、真っ黒でぱっちりした目に少しだけ茶色いふわふわした髪の毛をしていた。

あ、つぐみちゃんがすきそうな髪。

こんな場面でそんなことを考えたあたしは、やっぱりどうかしてる。

つぐみちゃんは、パパなんだって。

思考が飛んでたあたしの耳に、こんな言葉が入ってきた。


「あらー若い子はいいわねえ」


一気に現実に引き戻される。


「ご、ごめんなさい!」


こ、この格好は、それこそ恥ずかし過ぎる!