「何?葉月ってば、ため息なんかついて。これからお祭りでしょ、楽しみじゃないの?」

ママが真っ赤な帯を締めながら、言う。

黒ベースで、ピンクの大きな花がついた、お気に入りの浴衣。

コレを着せてもらうときはいつだって気分はワクワクしてて、ため息なんて出てこなかった。

「何でもないよ。ちょっと受験勉強で疲れただけ。お祭りは楽しみだし!」

ママに心配かけないよう、笑顔で言う。

「まぁ今日は息抜きしてらっしゃい♪」

帯を結び終わると同時に、ママがあたしの背中を押した。

と、同時にあたしの携帯が鳴る。

「葉月?準備できた?」

「うん、今浴衣着せてもらったとこ☆」

「じゃ、駅前にー、6時30分集合で♪」

「オッケイ♪」