色つきリップ〜紅い唇〜

 


「大人になると、『諦める』ことが上手くなるのよ」


足を止めて、ママを見た。


「『諦める』ことだけじゃないわね。他にも『本音を隠す』とか『気付かないフリ』をするとか……まあいろいろ、上手くなるのよ」


「ふうん……なんか、大変そう」


「そうでもないのよ?」


ママはもう一度声を上げて笑って、それからわたしを見て言った。


「美咲、泣くほど悩めるなんて、とても素敵なことなのよ。
ママは美咲に、今の気持ちを忘れないようにして欲しいな」


「……悩みに、答えなんてあるのかな?」