色つきリップ〜紅い唇〜

 

不意に口をついて出た、咄嗟の嘘。


「わたし、好きな人なんていないよ?斎藤くんの告白断ったのは……まだ誰とも付き合う気なんてなかったから」


「本当?」


「うん」


気付かれちゃいけない。


わたしが大野のことを好きだって……。


「さっき『斎藤くんに合わせて?』って言ったのはさ……大野と彩香がさ、あんまりラブラブだから……いいなぁ、わたしも!なーんて突然思っちゃった」


「えー?わたしたちラブラブなんかじゃないよ〜」


彩香の明るい笑い声にホッとする。