「……」 「……」 気まずい沈黙が彩香とわたしの耳を通り抜けて。 自分のズルさにうちひしがれるわたしは、話す言葉すら選ぶことも出来ない。 「ねえ美咲」 彩香が沈黙を破り、声を出した。 「美咲の……好きな人って誰?」 「……す、好きな人?」 早くなる心臓に動揺して、うまく言葉が出ない。 「今日斎藤くんに聞いたんだけど、『好きな人がいるから』って斎藤くんの告白を断ったんでしょ?」 「あ……」 「美咲?」 「あれは……嘘なの」 ・