色つきリップ〜紅い唇〜

 


彩香の進む先に見えた、大きな背中。


大野だ……


足を止めた瞬間に感じる、胸の鼓動。


「あっ、真治おはよう!」


その背中に躊躇うこともなく、彩香が自分の彼氏である大野に声をかけた。


「……オス」


朝はいつも不機嫌な大野らしい挨拶を彩香に返す。


「ねえ真治、今ね、美咲と話してたんだけど」


彩香の言葉にわたしを探すように振り向いた大野。


そんな大野と目が会いそうになった瞬間に反らしてしまうわたし。


昨日はあんなに近かった顔がなんだか見れない。