でも、現実は違った。


ニュースで亡くなった人の名前が写し出され中に、北原阿紀の名前があったのだ。


私も母さんも電話の向こうの琢哉さんも、大声を上げて泣いた。

神様なんていないんだ。


胸に抱かれた琢磨が、顔をグシャグシャクにして泣く私をじっと見つめている。


琢磨のママいなくなっちゃったけど、琢磨は一人なんかじゃない。


奈都オバチャンがついてるからね。


オバチャンって呼ばれるのが嫌だったのに。


暴れて嫌がる琢磨を強く抱き締めると声を張上げて泣く。


お姉ちゃんが死んだと言う現実を受け止められず、全身の力が抜けその場から動けずにいた。


母さんは伯母さんたちに電話して、姉の葬儀は同じ町内の人たちに頼む事にしたと言う。


琢哉さんが葬儀の為に新幹線で帰って来た。


「奈都ちゃん色々ありがとう。阿紀の葬儀が終わったら、お母さんに話したい事があるんだけど、奈都ちゃんも一緒にいいかな。」


なんの話なのだろうか。


聞くのが怖い。


このまま大阪から戻って来ない話なのか。


琢磨を連れて行くつもりなのかも知れない。


どうしよう。


琢磨と離れたくない。


琢磨をぎゅっと抱き締めた。