母さんの声が遠く聞こえ、声も震えていた。


絶対間違いだと思う。


「琢磨はぐっすり寝てるよ。お姉ちゃんは琢磨残して死んだりしないよね。」


母さんの返事を待つと。


「阿紀は運の強い子。絶対あの飛行機には乗っていない。店閉めたから直ぐに帰るよ。」


携帯が又鳴る。


今度は琢哉さんからだ。


琢哉さんはお姉ちゃんが今日大阪に行こうとした事を知らない。

「もし、もし、奈都ちゃん。阿紀の携帯に何度も掛けてるんだけど、出なくて。阿紀が何処にいるか分かるかな。」


体が震えてうまく話せない。


どうしよう。


「琢哉さん、お姉ちゃんが、お姉ちゃんが、」


声が震えてうまく話せない。


「奈都ちゃん落ち着いて、阿紀がどうしたの。」


それが、あの。


「今日琢哉さんのとこ行こうとして、大阪行きの飛行機に乗ったの。そしたら、その飛行機が墜落したニュースやってて、それで、」


涙が止まらない。


「阿紀が何で大阪に。」


「琢哉さんが浮気したと思ったみたい。」


「俺が浮気? 俺が浮気する訳ないだろう。阿紀をこんなに愛してるのに。」


分かってるはずだけど、お姉ちゃんは心配になったんだと思う。

不安だから会いに行ったのだ。


琢哉さんに会って、確めたかったんだよね。


お姉ちゃんらしいと思う。