琢哉さんに子供あつかいされた事が腹立たしい。


中学生の私が子供あつかいされるのは当たり前なんだけど。

おもしろくないのだ。


どんなに大人ぽい服を着ても、どんなに背伸びをしても、子供であることに変わりなかった。


「奈都ちゃん、ご機嫌直してよ。俺が悪かった。」


琢哉さんは私の気持ちに気づく事もなく、みんなの前で堂々と夫婦でいる事もおもしろくなかった。


本当は夫婦あつかいされた事が嬉しい癖に素直に喜べないのだ。


琢哉さんは言ったんだ。


「今日は奈都ちゃんの事、阿紀と思っていいかな。」


その言葉はあまりにも残酷過ぎるよ。


この服ここで脱ぎ捨てたい。


仁藤奈都を見てほしいのに。


琢哉さんはいつもお姉ちゃんを通して私を見てるんだ。


お姉ちゃんに似てるからこうして一緒にいるだけ。


私の存在なんて、何処にもないのだ。


そう思うと、なんだか凄く惨めで悲しくなった。


ここで泣く訳にはいかない。


「早く帰ろう、疲れちゃった。」


今は琢哉さんの顔も見たくなかった。


琢哉さんなんか嫌いだ。


もうやだよ。


私はお姉ちゃんじゃない。


お姉ちゃんはもういないのに。


お姉ちゃん、ごめんね。


いつまでお姉ちゃんの代わりをすればいいのだろ。


もう、琢磨のママでいるのは無理なのかも知れない。