卒業式も無事に終わり教室に戻った。



教室の後ろには父兄がいて、先生からのお別れの言葉にみんなが泣いていた。



それぞれがここから新しい道へと歩み始めるのだ。



みんなで校舎を出ると、在校生がアーチを作ってくれているので、その中をくぐり校門へと向かう。



私たちは最後にアーチをくぐった。



もうみんなの姿はない。



私は一歩一歩を踏みしめて校門へ向かう。



校門に誰かがいた。



スーツを着た背の高い男人と小さな子供。



《嘘、琢哉さんがいる訳がない。》



会いたくて、会いたくて、幻覚が見えてしまったんだ。



涙で霞んで何も見えなくて、歩けなくなってしまうと。



「ママー 。」



琢磨が私に抱きついた。



「琢磨、琢磨なの?」



「ママーママー 。」



泣きじゃくる琢磨を、かがんで抱き締めた。



「奈都、駄目だろ。お腹に赤ちゃんがいるんだから。」



その声に驚いて、顔を上げた。



「琢哉さん、琢哉さんなのね。」



「そうだよ、幽霊だと思ったのか。ママのお腹に赤ちゃんがいるんだよ。」




何でいるのよ。


何で、突然現れたりするの。


どうして、いるのか理解出来ない。