奈都ちゃんが病室のドアにかけた手を止めた。


本当に情けない。


俺が先に病室に入ろうとした。


「どんな事をしてもあなたがほしい。私の気持ち分かってね。琢磨君のいいママになるわ。」


奈都ちゃんが俺の手を掴む。


奈都ちゃんが泣いていた。


体を震わせ、声を押し殺して泣いている。


俺は奈都ちゃんを抱き締めた。


奈都ちゃんには俺がいるから大丈夫だよ。


中学生の奈都ちゃんにどうする事も出来ない。


これは琢哉さんと南さんの問題だ。


琢哉さんが分かったとだけ答えた。


南さんの恐ろしいほどの愛情。


俺には絶対無理だな。


片方の強い思いだけでは、いつか必ずバランスを崩す。


結婚しても上手くいくはずがない。


琢哉さんが心配になった。


俺はどうすればいい。


南さんと琢哉さんが一緒になれば、俺は安心出来る。


琢哉さんの幸せを考えると、南さんと結婚しない方がいいのかも。


俺の気持ちは何処に行こうとしてるのだろうか。