ナツの誘惑





秋の夕暮れ涼む風



放課後の非常階段には

運動部のかけ声が遠くから聞こえてくる



今日は少し

肌寒い




「…緒斗くん」




ナツはもう、終わったはず




「授業はもう終わってるのに、どうして帰らないの?」


「…別に。お前こそ帰れば」


「だって私、秋のオトが好きなんだもん。澄んだ空気の流れる音や、夕陽に重なる虫の声。こんな場所でもよく聴こえる。…いい季節だよね〜」




空を見上げる横顔は

あの暑さの中より
ずっと大人になってた




「オトか…緒斗じゃなくて」


「緒斗くんのことはなんとも想ってないよぉ。好きでも嫌いでもない。……でも」




幼く見えてたカールの髪が

風になびくストレートに変わる




「でも、明日はどうかわからない」




その表情に

刹那に感じる胸のざわめき

鼓動の抑揚



そうやってまた
オレの気を誘うのは

季節のないキミの誘惑



到達した後も

虚しさを感じず追い求める気持ち



それは先の見えない

恋の始まり…?






【END】