自分にはピアノの才能がある。
そう気付いたのは、本当に最近のことだった。もっと早くに気付いていれば、今までの人生なんだったんだろうというような人生を歩めたかもしれない。いくつのもコンクールですばらしい結果を残せたかもしれない。
けど、今更、なのだけどね。
そっと、ピアノに触れてみる。今日から、君は私のパートナーだよ?
それに…私が曲を奏でれば、その美しい旋律に彼も振り向いてくれるにちがいない。
ああ、楽しみだわ。彼が私の奏でるメロディにうっとりするその姿!!想像するだけでなんともいえない感覚が走る!!ああ、早く彼が現れないかしら!!
ぽろん、ぽろん…。
待ち切れず、ピアノに指を走らせる。次第に、まわりが見えなくなる。
ぽろん、ぽろん、ぽろろん…!!
曲もクライマックスにむけて盛り上がる。無心で引き続けていた、ちょうどその時。

「ひ…!!」

待ち侘びていた、その声が走った。
けれど、その声は私が想像していたものとは全くちがうもので。
「ゆう…れ、い…?!」
そして発された言葉も、想像とは全くちがうもので。
彼は、すぐこの部屋からでていった。
ああ、自分は…