第二ボタンと春の風



「ねぇ亜紀!」


麻衣が急かす。


付き合ってはないよ、と

言わなくちゃ、と

思った。


口を開いた。


「……付き合ってねーし」


答えたのは、私じゃなかった。




石井が私のすぐ後ろに立っていて、

仏頂面で麻衣に言ったのだった。


その態度に怒ったのか、
安藤が私を押しのけて石井に突っ掛かる。


「ちょっと石井!
そんな言い方ないじゃん!」

「他になんて言うの?
だって事実っしょ」


吐き捨てるようにそう言ってから、
石井はさっさと私の横を通って
部屋に行ってしまった。



一度も私を見ようとしなかった。