十五の妄影(もうえい)

まずい単語を口にした。

その事に気づいたらしく、男子生徒は慌てて訂正する。

「ば、化け物じゃない!あの黒いの!黒い生き物!な、な?」

「……」

腸が煮えくり返る。

妄影を…僕の分身を化け物呼ばわりされた事も、簡単に土下座するプライドのなさも、こんな奴らに今までいじめられていたという事実も。

更には。

「なぁ頼むよ石田あぁぁ…」

鼻水を垂らし、涙で顔を汚し。

男子は見苦しく僕に命乞いし始めた。

僕の足にしがみつき、懇願する。

「俺だけでいいから…後の奴は好きにしていいから」

「てめぇっ!!」

「何言ってるのよっ!」

「助けるなら私だけにしてよ!あんたは死になさいよ!」

とうとうクラスメイト達は仲間割れを起こした。

生き残りたいが為に、他人を足蹴にしてまで命乞いをする。

今まで蛇蝎の如く忌み嫌っていた僕の前で、額を床に擦り付けてまで。