十五の妄影(もうえい)

黒い人影…妄影は素早かった。

すぐさま手近にいた男子生徒…奇しくも僕の胸ぐらを掴んだリーダー格の男子生徒、その両肩を掴む!

「アワッ、アワワワワワ!」

いつも僕に対して見せる威圧感たっぷりの態度とは全く違う、無様な事この上ない声で、男子生徒がうろたえる。

滑稽だ。

滑稽だよ、お前…。

「…そのまま消えろよ」

僕が呟いた瞬間。

「!!!!」

妄影の目鼻立ちのない顔。

その双眸の部分が、赤く鈍い光を放った。

更に、人間で言う口の部分にぽっかりと穴が開く。

それは口でいいのか、それともやはり穴なのか。

ともかく、そのどこへと続いているのかわからないほどの暗黒しか見えない穴は際限なく広がっていき。

「うわぁああぁああぁあぁっ!」

悲鳴すら飲み込むように。

妄影は男子生徒を頭から丸呑みにした。