十五の妄影(もうえい)

今までなら、黙ってさえいれば僕は空気だった。

誰にも気にされない。

誰も構わない。

無視されるだけで、その場をしのぐ事が出来た。

しかし、今日ばかりは違った。

「石田」

数人の男子生徒が僕の席に近づいてくる。

昨日、僕を柔道場でリンチしたあの男子生徒達だ。

「よくノコノコ学校来れたな。あれだけの事されてまだ来るなんて、お前マゾ?」

リーダー格の男子生徒の言葉に取り巻きの連中が笑う。

「で…いつ連れて来るんだ?」

「え…?」

俯いて視線を合わさなかった僕だけど、その言葉には思わず顔を上げてしまった。