十五の妄影(もうえい)

「佐奈さん」

「ひっ!」

突然肩を叩かれ、声をかけられ。

私は鋭く息を飲んでしまった。

振り向くと、紅茶を淹れた晋作君が立っていた。

「どうしたんですか?こんなとこでボーっと…」

「え…ああ…いや…」

私は笑みを浮かべて誤魔化す。

「ちょっと考え事。ごめんね、ぼんやりしてて」

「いえ」

首を横に振って笑顔を見せた晋作君は、いつも通りの彼だった。

「さ、部屋に入って下さい。今日もよろしくお願いします」

「うん」

礼儀正しく挨拶され、私は先程までの妙な感覚を心の隅へと追いやった。