十五の妄影(もうえい)

こういう場合、喧嘩して飛び出していくのは子供の方だろう。

子供と喧嘩して家出する親なんて聞いた事がない。

なら、お母さんはどこへ…?

本当に帰ってないのかしら…。

でも、始めから不在だったというには、この家に漂う虚無感は何だか只事ではなかった。

何ていうか…いた筈の人間がいなくなったような。

そう…お通夜みたいな雰囲気だ。

存在した筈の人間が不意に亡くなった。

それほどの喪失感を感じる。

…そんな馬鹿な。

私は考えを打ち消す。

そこまでの事があったなら、晋作君のあの平然ぶりは辻褄が合わなくなる。

だったらこの雰囲気は一体…。