十五の妄影(もうえい)

それにしても。

「……」

私は家の中を見渡す。

静かだ。

お母さんがまだ仕事から帰ってきていない。

晋作君はそう言っていたけど…。

住人が一人足りないだけで、家の中というのはこんなに静寂に包まれるものだろうか。

私には何か違うような気がした。

何度もお邪魔したせいでわかる、違和感。

いつもの温かな雰囲気が、今日は感じられなかった。

生活感の欠落というか、『家族』の住む家から、何かが欠けたような感覚。

長年住み続けていた誰かが、不意に姿を消したような喪失感。

大袈裟だろうか。

でもそういった、今ひとつ何かが足りないような、そんな感覚があった。

生活の匂いだけを残して、何かが消え失せたような…。