十五の妄影(もうえい)

ピタリと。

晋作君は廊下の途中で立ち止まった。

まるで強引に何かに引っ張られたかのように。

少し不自然に見える止まり方だった。

「…晋作君…?」

何だか様子がおかしい。

怪訝に思っていると。

「ああ」

晋作君が振り向く。

はにかんだような微笑。

その表情はいつもの晋作君だった。

「今日は仕事が押してるとかで、遅くなるらしいです」

「…ふぅん…そうなんだ」

にしては、玄関に女物の靴があったような気がしたけど。

あれはお母さんの靴じゃなかったのかしら。

別の靴を履いていったのかもね…。