十五の妄影(もうえい)

「ごめんねー、遅くなっちゃって」

早速中に入る私。

「いえ…でも今日は来ないのかと思っちゃいましたよ」

苦笑いしながら、晋作君は玄関のドアに鍵をかけた。

ガチャン、と。

ロックの音がやけに耳に残る。

「さ、行きましょうか。先に僕の部屋に行ってて下さい。コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」

「あ、えーと…じゃあ紅茶を」

言いながら、私は廊下を歩く。

…何だろう、家の中が妙に静かだった。

「ねぇ晋作君」

前を歩く彼の背中に話しかける。

「今日は…お母さんは?」