十五の妄影(もうえい)

リビングの入り口に立つ僕。

その僕に寄り添うように、影が立っていた。

光に照らされて現れる影じゃない。

はっきりと立体化した、黒い分身。

妄影が、僕の傍らに立っていた。

「……」

大きく目を見開いたまま、母さんは言葉を発する事が出来ない。

目の前に突然現れた、自分の常識の範疇にはない存在。

そしてその存在を従える息子。

その二つを見つめながら、母さんは一体何を思ったのだろう。