十五の妄影(もうえい)

一階に下りる。

母さんはリビングのソファに座り、目を閉じていた。

軽く額に手を当て、何か考え事をしているみたいだ。

「母さん」

僕は母さんを呼ぶ。

…返事はない。

「ねえ、母さん」

「…何よ」

面倒臭そうに母さんが返答した。

「こっち向きなよ母さん」

「何よ!うるさいわね!」

怒気を孕んだ声と共に、母さんは振り向く。

そして。

「っっっっっ!?」

その表情のまま、凍りついたように動かなくなった。