十五の妄影(もうえい)

「晋作」

突き放すような声で母さんが言う。

「学校は休ませないわよ。明日も行きなさい。どんなにいじめられても学校は休まず行きなさい」

今の僕にとって、余りにも酷な発言。

しかし母さんが折れる気配はなかった。

「泣き寝入りなんて絶対許さないわ。貴方が休めば学校から連絡がくる。そしてもしいじめられてたなんて事実が知れてみなさい。事はもっと大きくなるのよ。親や教師が介入するような大事になるわ。何でたかが子供同士のいじめで、そんな煩わしい事にならなきゃいけないの」

この期に及んで、母さんの口から出たのは、また『煩わしい』だった。

「子供同士の事なんだから、貴方といじめてる子の当人同士で解決なさい。私は首を突っ込みたくないんだから。いいわね?」

一方的に言うだけ言って、母さんは部屋のドアを閉めた。

「……」

ぎゅっ、と。

拳を握り締める。

あれが…親の言う事か…?