十五の妄影(もうえい)

部屋に入ってきた母さんの表情は、ひどく冷め切っていた。

少なくとも、いじめを受けた息子の事を心配している顔ではない。

「下の部屋まで声が聞こえたわよ」

半ば呆れ顔で母さんが言う。

「泣いてたのね」

「…うん」

俯き加減に頷く僕。

そんな僕に。

「情けない」

母さんは吐き捨てるように言った。

「たかがいじめられたくらいで、声を上げて泣きじゃくるなんて…私の育て方が間違ってたのかしら。そんな意気地のない子に育てたつもりはないんだけど」

慰めを期待していた訳じゃない。

優しい言葉をかけてくれるなんて思っていた訳じゃない。

だけど母さんの口から出たのは、あまりにも辛辣な言葉だった。