十五の妄影(もうえい)

と。

「晋作」

部屋のドアをノックする音が聞こえた。

母さんだ。

僕はさっきまで泣いていた目を擦り…そうだ、妄影をどこかに隠れさせないと!

そう思って振り向き。

「!?」

既に妄影の姿が跡形もなく消え去っている事に驚愕した。

馬鹿な…さっきまでそこに立っていたのに。

僕の輪郭を形どった、黒い影…。

感情が昂ぶる余り、幻覚でも見たのか?

それとも夢?

現実と妄想がごっちゃになっただけ?

把握できないうちに。

「入るわよ」

ドアを開け、母さんが部屋に入ってきた。