十五の妄影(もうえい)

影。

それ以外の表現を、僕は思いつかなかった。

黒い、影。

濃霧が一定の形を形どったような。

或いは小さな黒い羽虫が無数に集合したような。

そんな影。

どこから現れたのか。

どこから来たのか。

…いや…さっきの吐き出すような感覚から考えるに…。

「僕の中から…?」

目の前の影を見ながら、僕は呟く。

…ありえない超常的な現象を目の当たりにしながら、恐怖や疑いは全くなかった。

むしろ感じるのは親近感。

長年の友人と共にいるような、安心感。

これもまた、僕の中からこの影が出てきたという証拠だろうか。