十五の妄影(もうえい)

その瞬間。

「!!!!!!」

ぞわりと。

背筋を走る経験のない感覚。

感じた事のない痺れが、僕の体から持ち上がり始めた。

それは、突き刺さっていた棘がゆっくりと抜けていく感覚に似ている。

或いは、堪えていた嘔吐を耐え切れずに吐き出す感覚。

つかえていたものが外に出る。

淀んでいたものが流れ出す。

ふと。

佐奈さんの言っていた、『黒くてドロドロしたもの』という言葉を思い出す。

快感にも似た、この感覚の果てに。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

息を荒げながら顔を上げると、そこには『影』が立っていた…。