十五の妄影(もうえい)

息を乱しながら、何とか逃げおおせる。

家に着いた頃はすっかり暗くなっていた。

…自転車のライト…明日直さなきゃな。

暗い気分の中、玄関のドアを開ける。

「ただいま」

「晋作!」

もう帰ってきていたらしく、母さんが玄関まで出てきた。

「貴方こんな時間まで何をして…」

言いかけた母さんは、僕の姿を見て絶句する。

そりゃそうだろう。

千切れかけた制服の袖、所々にある青痣。

さっきの警官は暗がりのせいで見えなかったみたいだけど、明るい家の中なら一目瞭然だ。

「晋作、またいじめられたの?」

「うん…」