十五の妄影(もうえい)

「んー?その制服は日向高校か?」

暗がりの中でよく見えなかったのか、警官が僕を凝視する。

その目が、クラスメイトの冷ややかな視線に似ていて、たまらなく嫌だった。

「とりあえず生徒証と…それから住所と名前」

手帳とボールペンを取り出す警官。

何だよこれ…。

職務質問って奴?

どうして僕が?

何もしてないじゃないか。

どうしてこんな…容疑者みたいな扱いされるんだ?

「ほら、早く」

急かす警官。

僕は。

「あ!こら待て!」

一瞬の隙を突き、自転車を全速力で走らせて警官から逃げた。