十五の妄影(もうえい)

日が傾き始め、外が薄暗くなった頃、僕はようやく立ち上がって柔道場を出た。

水道で血まみれの顔を洗い、一旦教室に戻る。

…僕の机がひっくり返され、中に入れていた教科書やノートが散乱していた。

誰もいない教室。

その中で、床にしゃがみ込んで机を起こした。

…鞄を持って教室を出る。

靴箱に行くと。

「!」

僕の靴に、また泥が山盛りに入れられていた。

昨日佐奈さんがプレゼントしてくれたばかりの、スニーカー。

今朝までピカピカだった、新品のスニーカー。

きっとこれから先、僕の宝物になる筈だったスニーカーは、何年も使い古されたみたいに薄汚れてしまっていた。

…泥を捨て、上履きから履き替える。

ジャリ、と。

残っていた泥が音を立てた。