十五の妄影(もうえい)

連れて行かれたのは柔道場だった。

柔道部が放課後には部活をしているけど、今日はどうやら部活は休みらしく、誰もいなかった。

クラスメイトの一人に柔道部の人間がいて、今日は柔道場が使われていない事を知っていたのだ。

柔道場に入るなり。

「石田ぁ」

僕は畳の上に突き飛ばされる。

柔道部の奴が道着に着替えている間、他の男子が僕を取り囲んで逃げられなくした。

「な…何…?」

これまで無視されて、冷たくされて、孤立はしていた。

けれど、暴力はなかった。

痛い思いをさせられる事はなかったし、怪我する事もなかった。

だから我慢していられたんだ。

なのに…。

僕は沸きあがる恐怖と戦慄に、震えた。