十五の妄影(もうえい)

意識はない。

衰弱している。

だけど生きている。

妄影に捕食され、きっと絶命したと思われていた犠牲者達。

しかし彼らは誰一人として命を落とす事なく、傷一つ負わずに妄影の体内で生きていた。

「……」

知らず、涙がこぼれた。

あれほど晋作君が憎悪していた人達。

晋作君をいじめていたクラスメイト。

理解してくれなかったお母さん。

助けてくれなかった担任の先生。

乱暴な手段で制圧しようとしたSATや特殊作戦郡の隊員達。

妄影の力を以ってすれば、きっともっと残酷な手段で命を奪う事もできたのだろう。

即死させる事だって出来たに違いない。

だが、彼らは全員生きていた。

私も含め、誰一人として死んではいなかったのだ。