十五の妄影(もうえい)

「晋作君は強いのね」

夜空を見上げながら佐奈さんが言った。

「え?」

反射的に彼女の横顔を見る。

「だってそうでしょ?それだけの事をやられて、普通ならクラスメイトに怒鳴り散らしたり、先生にチクッたり、教室から逃げたり…でも晋作君はじっと我慢してる。逃げもせず、目をそらしたりもせず、ずっと耐え続けてる」

「…それだけしかできないんですよ」

僕自身、耐え続けるしか出来ない自分の気の弱さには辟易していた。

「でもね」

佐奈さんが歩く僕の顔を覗きこむ。

「耐え続けるのって良くないわ。誰かにSOSを出さなきゃ。苦しいのや悲しいのって、溜め込んでも何の解決にもならない…それどころか、きっと黒くてドロドロしたものが自分の中に溜まっていく…それがどうしようもない量になった時にはもう遅いわ」