十五の妄影(もうえい)

二時間ほどの勉強の後、リビングで母さんも交えて紅茶を飲む。

気がつくと午後八時。

「晋作、佐奈先生を駅まで送ってあげなさい」

母さんに言われなくても、僕は自分から佐奈さんと一緒に玄関へと向かっていた。

「それじゃあお邪魔しました。紅茶美味しかったです」

「またお願いしますね、佐奈先生」

母さんと挨拶を交わして、佐奈さんが玄関を出る。

僕もそれに続いた。

「汚れちゃってるね」

歩きながらふと、佐奈さんが言う。

その視線は僕の靴に向いていた。

「…何度も土入れられてるから」

少し俯き加減に僕は言う。

男の癖に、クラス全員からいじめられて、孤立して。

僕はかっこ悪い奴に見えているだろうな。

そう思うと、佐奈さんと目を合わせられなかった。