十五の妄影(もうえい)

今まで飲み込んできた人間達と同じように。

触手は佐奈さんの華奢な体を軽々と持ち上げる。

そして運び込む。

悲鳴さえも飲み込む、漆黒の闇の淵へ。

どこに通じているのかは僕さえも知らない。

地獄なのか、それよりも酷い場所なのか。

ただ…僕を裏切り、苦しめた人間の逝く場所が、天国である事だけは許せなかった。

…その漆黒の闇の淵へ、佐奈さんを放り込んだ。

一つだけ…佐奈さんの苦しむ顔だけは見たくなかった。

他の連中みたいに、胃液を吐き散らしながら苦悶の表情を浮かべる佐奈さんだけは見たくなかった。

佐奈さんは綺麗なままの佐奈さんでいて欲しい。

だから。