十五の妄影（もうえい）

顔を上げた僕に、佐奈さんは微笑みかける。

「学校にいる生徒なんて、クラスメイトだけじゃないでしょ？他の教室にだって、先輩だっている。よその学校に行った友達だっているでしょ？隣の御影市の高校に行った、先輩の宮川君だったっけ？中学の時に仲良かったんでしょ？前話してくれたじゃない｣

「……」

「つまり」

椅子から立ち上がり、佐奈さんは僕の肩に手をかける。

「クラスメイトにこだわる必要はないのよ。同じ教室にいるからって、絶対に我慢して仲良くしなきゃならない訳じゃない。そんな濡れ衣着せていつまでも陰湿なシカトするクラスメイトなんか、さっさと切り捨てちゃいな」

パチンとウインクして魅力的な笑顔を見せる佐奈さん。

その表情に、少しだけ僕の気持ちは軽くなる。

「…はい、わかりました」

そう答える頃には、何とか僕も笑みを浮かべられるようになっていた。