十五の妄影(もうえい)

一定の距離を置いたまま、佐奈さんは僕と向き合う。

「…………」

僕は何も言えない。

あれほど怒り、憤っていた。

SATや特殊作戦群のやり方に反発し、僕を否定する連中に思いの丈をぶちまけていたのに、佐奈さんに対しては、一言も口にする事が出来なかった。

と。

「大変な事に…なっちゃったね…」

佐奈さんがポツリと言う。

責めるでもなく、肯定するでもなく。

ニュートラルな感情のまま。

佐奈さんは小さな声で呟いた。

…僕は無言のまま頷く。

頷くしかできなかった。