十五の妄影(もうえい)

僕との距離を置いて停車する軽装甲機動車。

「よし、例のものを」

指揮官が言う。

「しかし…」

隊員が躊躇する。

「『あれ』を使えば少年の身の安全は保障できません」

「止むを得んのだ」

指揮官は厳しい表情で言った。

「このままあの少年と黒い化け物を野放しにしていれば、被害は日向市だけに留まらず、近隣の御影市にまで及ぶ可能性がある。どうあっても、彼をここで食い止める必要があるのだ…彼の…あの少年の犠牲は止むを得ない」

「……」

僕はそのやり取りを聞いていた。

確かにあの指揮官は言った。

僕が犠牲になるのは、『止むを得ない』って…!