十五の妄影(もうえい)

僕は気づかない。

この後ろめたさ、虚無感がどういうものなのか。

興奮して、混乱して、昂ぶった精神状態の僕にはわからなかった。

…これは虐げる立場の者、全てが等しく感じる筈のもの。

感じなければいけない筈のもの。

弱い者を蔑み、虐げれば、一時の優越は得られる。

しかしその後に襲ってくるのが、この虚無感と後ろめたさ。

良心ある者ならば必ず感じる、己への失望、情けなさ。

自分より弱い者にしかその力を向けられないという虚しさ。

それが自分の心を苛む。

…だけどいじめられる事しか経験した事のない僕には、その感情の意味が理解できなくて。

やっと自由を得た筈なのに、何でこんな気持ちになるのかがわからなくて。

訳もなく叫び、吠え、周囲の人間に力を誇示した。