十五の妄影(もうえい)

「さあ!君も早く!」

警察官が一人の女性の手を引き、避難を促す。

…見間違う筈もない。

その女性は佐奈さんだった。

きっと騒ぎを聞きつけて、ここまで来ていたんだろう。

「……!」

佐奈さんは僕に視線を向け、何か言いたげな悲しい表情を見せ。

「早くしなさい!」

何も言えないまま、警官によって強引に避難させられていた。

…その瞳、その表情。

その佐奈さんの姿に、後ろめたくなる。

目を合わせられない。

胸が締め付けられるような気分。

何でだよ…どうして僕がこんな気分にならないといけないんだ。

…感じていた虚無感とあいまって。

「うああああああああっ!!」

僕は吠えずにはいられなかった。