その虚無感が余計に僕を苛立たせる。

何でだよ…。

長い間いじめられて、虐げられて、蔑まれて。

やっと僕が自由に振る舞える時が来たのに。

立場が逆転して、今まで僕を否定していた世界を、逆に僕が否定する事が出来るようになったっていうのに。

…何でこんなに虚しいんだろう…。

何でこんなに悲しい気持ちになるんだろう…。

浮かない表情のまま、僕は一歩踏み出す。

「逃げて!民間人の方は大至急避難して下さい!」

校門に集まっていた野次馬、マスコミ。

それらを避難誘導する警察官達。

まるで僕を恐ろしいもの、危険な何かのような目で見ている。

その瞳にあるのは、脅え、畏怖、嫌悪。

その瞳には覚えがあった。

…昨日まで僕が、クラスメイト達に対して向けていた目。

あんな情けない、ビビリまくった目をしていたんだなと思うと悲しくなった。